犬を飼っている方のなかには、「子どもを残してあげたい」と思う飼い主さんも多いのではないでしょうか?
また、「愛犬の様子がいつもと違うので、もしかして妊娠しているのでは?」と不安に思っている方もいるかもしれません。
そこで今回は、「犬の妊娠」にスポットをあて、時期別の妊娠兆候や難産になりやすい犬種などを解説します。
妊娠してから飼い主さんが知っておきたいことも紹介するので、愛犬が妊娠した際の参考にしてみてください。
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犬の妊娠・出産について
まず、犬が妊娠したらどのような変化があるのか、どれくらいの期間で出産するのかなど、犬の妊娠から出産までの過程を解説します。
出産適齢期
犬の出産適齢期は、おおよそ2歳から6歳までとされています。
犬の体が完全に成熟する年齢が2歳前後で、高齢出産で難産になることを避けるため、6歳頃までに出産するのが適切だと考えられているためです。
犬の6歳は人間の年齢で40代になります。
出産を考えている飼い主さんは、愛犬のために6歳までの出産を考えましょう。
犬の妊娠期間はどれくらい?
犬の妊娠期間は57~67日の約2ヶ月です。
犬は人間とは違って、一度に何匹もの子を出産します。お腹の子が多いと妊娠期間が短くなり、少ないと長くなる傾向があります。
交配から妊娠までの期間
犬の交配から妊娠までの期間はおおよそ2週間~2週間半前後です。
妊娠の定義は「受精卵が子宮に着床すること」だとされています。
犬の場合だと、交配(交尾)のあと、受精卵は幾度となく細胞分裂を繰り返し、子宮に着床するまで2週間~2週間半前後かかるのです。
着床した部分に胎盤が形成され、胎子は胎盤とへその緒を通じて母犬から栄養を吸収し、少しずつ成長していきます。
妊娠の判定ができる時期
妊娠を初期段階から判定するには、動物病院での検査が必要です。
超音波検査(エコー検査)によるものが一般的であり、早ければ交配後10日程度で胎子の入る袋、「胎嚢(たいのう)」が確認できます。
妊娠中期から後期になると、お腹の膨らみが顕著にみられ乳腺も張ってくるため、目に見えて妊娠を判別できるようになります。
ですが、乳腺が張っていても偽妊娠の可能性が否定できないことから、正確に妊娠の判別をするのであれば、動物病院での検査が最も有効な手段です。
偽妊娠とは妊娠をしていないのに、乳腺が張ったり、ぬいぐるみを子犬のように育てたりする現象のことをいいます。
詳しくは後ほど解説します。
胎子数が確認できる時期
胎子数は交配からおおよそ6週~7週程度で確認でき、この時期になるとお腹の中にいる胎子も少しずつ骨格が犬らしくなっていきます。
動物病院で腹部のレントゲン検査を実施するのが一般的であり、胎子の状態や大きさ、数が確認できます。
出産予定日を知る方法
犬が交配してから出産までの期間は、おおよそ57~67日ほどです。
人間もそうですが、出産予定日より早く陣痛がくることもあれば、遅くくる場合もあります。
あくまで目安程度になりますが、犬の出産予定日を知る方法として、交配日から一般的な出産までの期間を計算し算出する方法があります。
一般社団法人ジャパンケネルクラブが提供している出産日換算表というものがあるので、こちらを参考にすれば出産予定日の予想が可能です。
また、動物病院でエコーの検査を受けている場合は、交配日がわからなくても胎子の大きさから、おおよその出産予定日を教えてくれます。
妊娠の兆候
人間と同様に犬にとっても妊娠は大変なことです。
犬の妊娠の兆候を知って、愛犬をサポートしてあげましょう。
妊娠の兆候を時期別に解説します。
妊娠初期(1〜3週)
妊娠初期にあたる1~3週目は、食欲減退や味覚の変化がみられます。
人間にもあてはまりますが、犬もこれまで好きだった食べ物が妊娠中は苦手になるケースがあります。普段食べているドッグフードを食べてくれなくなることもあるのです。食べないことを叱るのではなく、妊娠の初期症状だということを理解して、別の風味や香り、味のするフードを選んであげてください。
また、人間と同様「つわり」の症状である嘔吐をおこす犬もいます。
妊娠中期(4〜6週)
妊娠中期にあたる4~6週は、お腹の膨らみや乳腺の張りが顕著にみられます。
この時期になると、妊娠初期に落ちていた食欲が戻り、食事の摂取量も多くなります。
胎子の成長と食欲の復活による体重の増加が起こる時期です。この時期になると、母犬は休息時間が多くなり運動活動が減っていきます。
運動量の減少による体重の大幅な増加が懸念されることから、食事の量をどの程度にするか、かかりつけの獣医師に相談するとよいでしょう。
妊娠後期(7〜9週)
妊娠後期にあたる7~9週は、これまで以上にお腹が大きくなり、乳腺の張りもパンパンになります。
また、この時期から母犬のお腹に触れると胎動を感じられるようになります。
出産に向けて営巣行動が活発にみられる時期になるため、飼い主は母犬が安心して出産できる場所を作らなければなりません。
産床は母犬が落ち着いて出産できるよう、出産予定日の2週間前には配置し、その場所に慣れさせておくようにしましょう。
産床の場所は、母犬が主に生活している部屋の一角に設置するのがおすすめです。
難産の特徴やなりやすい犬種
「犬は安産」とよく聞くかもしれませんが、犬でも難産を起こす場合があります。
犬の難産とはどのような症状なのか、どのような犬種が難産になりやすいのかを紹介します。
犬の難産とは
犬の難産とは、出産の過程で人間による介助や処置がなければ分娩が不可能であり、放置することで母体やお腹の子に危険が発生する恐れのある状態を指します。
通常、胎子が産道を通過する際の体位は、前位(頭位)約60%、後位(尾位)約40%です。しかし、まれに産道に対して横向きになる横位がみられ、その場合は難産に該当します。
難産のほかにも、「異常分娩」と表されることもあります。
難産が疑われる症状
難産が疑われる症状の例は次の通りです。
- 破水から時間が経っても分娩されない
- 胎子が横位の体位になっている
- 外陰部の伸長不良(初産の1匹目に多い)
- 肥満や運動不足、高齢などが原因による陣痛微弱
- 遺伝や母犬の発育不良による骨盤狭窄
- 体温低下から時間が経っても出産がはじまらない
このような症状が出た場合には、速やかに獣医師へ連絡を取り対応方法を確認しましょう。
難産になりやすい犬種
難産になりやすい犬種例は以下の通りです。
- ブルドッグ
- パグ
- ペキニーズ
- ヨークシャーテリア
- ボストンテリア
- シーズー
- チワワ
個体差による違いはあるものの、ヨークシャーテリア・チワワのような超小型犬種や、ブルドッグ・パグのような短頭種は難産傾向にあるといわれています。
難産を予防する方法
難産の予防には、肥満を防ぐための適度な運動やストレスのかからない環境を整えてあげることが重要です。
また、過去に難産の経験がある母犬の場合には、獣医師と相談したうえで、産前から産後までのケアをどうすべきか計画を立てるとよいでしょう。
偽妊娠とは
犬の偽妊娠について解説します。
偽妊娠の概要
偽妊娠は、妊娠・出産していない雌犬が巣作りや他の動物の養育をおこなったり、乳腺が張ったりする現象です。
原因としては、プロゲステロンとプロラクチンというホルモンが挙げられますが、犬によって症状の出現に差があることから、ホルモン以外の環境による要因も大きいといわれています。
偽妊娠時にみられる行動
偽妊娠時にみられる行動の例は以下の通りです。
- 巣作りを始める
- 攻撃性が高まる
- 食欲が減る
- 乳腺が張る
- 子育て行動を取る(ぬいぐるみの世話する)
- 乳汁が出る
愛犬にこのような行動がみられたら偽妊娠を疑ってみましょう。
偽妊娠の予防法
偽妊娠を予防するには避妊手術が適しています。
繁殖を望まないのであれば、病気予防の観点からも避妊手術は有効な手段です。
また、愛犬が偽妊娠をしてしまった場合には、子犬の代わりに世話をしているぬいぐるみを取り上げると、偽妊娠期間が短くなるといわれています。
交配予定がないなら避妊手術も検討しよう
交配予定がないのであれば避妊手術を検討するのがおすすめです。
かわいそうだと思う方も多いかもしれませんが、避妊手術は病気の予防になり、メリットも大きいのでしっかりと理解しておきましょう。
避妊手術をおこなうタイミング
雌犬の場合、生後6ヶ月程度ではじめての発情期がきます。
そのため、避妊手術をおこなうタイミングは生後6ヶ月前後が適切です。
また、雌犬は最初の発情期がくるまでに避妊手術を施すと、乳腺の腫瘍発生率が軽減するといわれています。
避妊手術のメリット・デメリット
避妊手術のメリット・デメリットは以下の通りです。
避妊手術のメリット
- 望まない繁殖を防げる
- 生殖器関係の病気予防になる
- 発情によるストレスが軽減される
- 生理現象による出血がなくなる
避妊手術のデメリット
- 太りやすくなる
- 全身麻酔の使用によるリスクがある
- 失禁症状を示す可能性がある
繁殖を望まないのであれば、愛犬の健康維持の観点から避妊手術は有効な方法です。
しかし、デメリットにあげた現象が発生しないとも限らないため、獣医師と十分に相談したうえで手術を実施するか検討しましょう。
まとめ
犬の妊娠にはさまざまな課題がありますが、飼い主が事前に知識を身につけ適切なケアを施せれば、愛犬の健康と生まれてくる新たな命を守れます。
飼い主さんひとりの力では限界があるため、獣医師に相談しながら、愛犬の妊娠から出産までをサポートしてあげましょう!
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